写真には著作権と肖像権(パブリシティ権)があり、複雑な権利関係にあるため多くの場合、「無断で写真を掲載する際に最も困難な問題」に発展しがちなのが人物写真です。写真を使う場合には被写体の権利も配慮し、モデルデルリリースを確認しましょう。

写真の著作権

著作権は撮影者にあり、撮影者が使用許諾したものは許諾の範囲内で利用可能です。しかし、被写体によっては異なる場合も。

基本的な事

・写真は撮影者に著作権が有る。
・しかし、被写体にも著作権は発生するし、他の権利でも保護されている。
・撮影された「創造物」。例えば著名な絵画等は二次著作権が発生し、許可無く使えば権利侵害。
・撮影対象が風景であれば、撮影者が公開する事は問題ない。
・撮影対象が群衆(無名の複数人物)であれば被写体のパブリシティ権は認められない。
・例えパブリシティ権は認められなくても事実に反する事を述べていれば問題となる。

公開ライブの芸能人を撮影した写真

日本においては、マーク・レスター事件などの事例を経て、おニャン子クラブ事件控訴審判決において、パブリシティ権に基づく差止請求が認められるに至った。

「氏名・肖像から生じる経済的利益ないし価値を排他的に支配する権利」を「パブリシティ権」と呼ぶ

▼ パブリシティ権 – Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/パブリシティ権

著名人の場合は、社会的に著名な存在であるがゆえに、第三者がその氏名・肖像等を使用することができる正当な理由の内容及び範囲が一般人と異なってくるのは、当然である。

パブリシティ権の主張は難しい

● キング・クリムゾン事件

レコード等のジャケット写真と収録楽曲の題号を掲げ、これに2行から30数行程度の解説文を付した「ディスク・ガイド」が、パブリシティ権の侵害に当たるとして訴えられた
原告の氏名、肖像写真、レコード等のジャケット写真といった顧客吸引力ある個人情報を商業的に利用する行為に該当し、原告は被告らの右行為によりパブリシティ権を侵害された。 - 原審判決

書籍に多数掲載されたジャケット写真は、それぞれのレコード等を視覚的に表示するものとして掲載され、作品概要及び解説と相まって当該レコード等を読者に紹介し強く印象づける目的で使用されているのであるから、被控訴人本人や「キング・クリムゾン」の構成員の氏名や肖像写真が使用されていないものはもちろんのこと、これが使用されているもの(これらがわずかであることは前記のとおりである。)であっても、氏名や肖像のパブリシティ価値を利用することを目的とするものであるということはできない。- 控訴審判決

・マーク・レスター事件(東京地判S51.6.29)

俳優等はその氏名や肖像の権限なき使用によって精神的苦痛を被らない場合でも、右経済的利益の侵害を理由として法的救済を受けられる場合が多いといわなければならない

・おニャン子クラブ事件(東京高判H3.9.26)

当該芸能人は,かかる顧客吸引力をもつ経済的利益ないし価値を排他的に支配する財産的権利を有する

▼ 実演家等の氏名・肖像- パブリシティ権 – 日本弁理士会(PDF) 
http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/200601/jpaapatent200601_067-069.pdf

▼ コンテンツ知的財産論: 第11講
http://www.sekidou.com/law/lives/contents/11

被写体が一般人なら勝手に写したのを使っていいの?

「使用が他人の氏名、肖像権の持つ顧客吸引力に着目し、もっぱらその(商業的)利用を目的とするものであるかどうかにより判断すべきものである」

本人の許諾無く掲載しされた場合もパブリシティ権を主張する事は難しいといえます。掲載側がモラルをもった運用を期待するしか無いでしょう。

▼ 写った人の承諾なく撮った写真は肖像権侵害になるの?/【漫画】僕と彼女と著作権・第5話
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/02/22/14360/page%3D0%2C6

その他、著作権に関する参考

▼ Vol.31 自分で撮った写真なのに『著作権侵害』!?http://www.dreamgate.gr.jp/knowhow/topics_detail/id=337

▼ ウェブサービス運営者なら知っておきたい著作権の基礎知識(1)「それは著作物なのか?」http://directorblog.jp/archives/51790439.html

最近多くなったフリー写真とは?

ブログやコンテンツの増加、増産によって、「イメージ写真」「サムネイル」の利用ニーズも急増し、無料で利用や加工、商用利用が可能な写真が増えてきました。

フリーの微妙な解釈の違い

有償のストックフォトにも「フリー」という表現があります。これは一度購入したら利用用途の制限を受けないだけで、「無料」という意味では有りません。

もともとストックフォトは広告向けに「1種類の印刷物」、「1つの広告」、「発行部数」等により利用制限があり、都度、契約して支払う必要がありました。「この制限をフリー」にし、「一度購入したら用途の範囲内で自由」=フリーという意味です。

モデルリリース

モデルリリースとは写真の被写体に個人が特定できる人物が含まれる場合、肖像権を持つ被写体に写真の使用を同意してもらう肖像権使用許諾書のことです。

写真の著作権が許可されても、人物である場合、肖像権の使用許諾が必要です。無料掲載可能な人物素材を使用する場合、このモデルリリースが必要です。

▼ モデルリリース、プロパティリリースとは何ですか。-PIXTA
http://pixta.jp/faq/?p=221

掲載自由とは「モデルリリースまで許可されて」いるかを確認する事がとても重要です。

サイト名 モデルリリース
ぱくたそ
http://www.pakutaso.com/
http://www.pakutaso.com/model.html
モデルピース
http://www.modelpiece.com
http://www.modelpiece.com/agreement.php *1
photo AC
http://www.photo-ac.com
http://www.photo-ac.com/auth/register
モデル・フォト
http://model.foto.ne.jp/
http://model.foto.ne.jp/agreement.html*1

*1 建物、物品など、モデル以外の写真被写体に関する肖像権、商標権、特許権、著作権、その他の利用権などの諸権利としているもの

モデルリリースがあって「無料」「商用利用可」は意外に少ないですね。

モデルリリースにて被写体が利用を認めている写真であればトラブル無く利用可能です。但し利用許諾に準拠する必要がありますのでご注意を。